夢の無い話

先週末、香港に二人の中国人がやってきた。彼らは中国で二回目の有人宇宙飛行を成功させた飛行士達だ。

現代の科学技術で有人宇宙飛行にどの程度の価値があるかわからない。しかし米ソについで三番目に有人宇宙飛行を達成したということで、中国国内では大きな騒ぎである。
二年前に中国ではじめての宇宙飛行を行った飛行士も、二、三ヶ月後に香港を訪れていた。

ここですこし気になるのが、なぜ飛行士達は香港に来るのか?ということである。
おそらく他の都市でも凱旋パレードや祝賀会なんかを盛大にやっているのだろうが、中国国内の他の都市より香港を優先しているように感じる。
宇宙開発に先んじていた米ソにしても過去、宇宙開発を政治的に利用をしていたので、今更何を、という感じは否めないが、中国政府も彼らを十分政治の道具とて使っていると思われる。

香港は1997年に中国に返還された。しかし「50年間不変」の原則を縦に、返還前と変わらない自由経済を謳歌している。中国政府にしてみれば、「50年間不変」なんて悠長なことは言わずに、できるだけ早く中国国内に取り込みたいに違いない。
しかし、そう簡単にうはいかない。そこで、宇宙飛行士達の出番である。
世界で三番目の偉業を達成した彼らが、香港人(中国人)と同じ国民である事をアピールし、香港人の中国への帰属意識を高める。
夢の無い話をすれば、こんなところだろうか?

夢の無い私の話はまだ続く。
こんな私でも幼少のころはアメリカのアポロ計画で、月に行く飛行士を描いた絵本「人間月へ行く」をぼろぼろになるまで眺めていた子供であり、当時はもちろん宇宙や月やへの空想をかき立てていた。
しかし、今となっては、そう簡単に宇宙や月へは行けない事をよく知っている。
実際、宇宙飛行士になるにはそれなりに優秀な頭脳、完璧な健康体が求められる。もちろん運も必要だ。
最近では、宇宙空間までいけるツアーの予約が流行っているようだが、それにしたって莫大なお金が必要だ。つまり、そう簡単には宇宙には行けない。

さて、先程の中国人宇宙飛行士の話に戻るのだが、香港での歓迎セレモニーで、香港の少年少女達との懇談があった。

その中で一人の女の子が「私は将来女性宇宙飛行士になりたいのだが、今何をすれば飛行士になれるだろう?」という質問をしていた。
飛行士氏曰く
「よく勉強し、体を鍛え、夢を追って行けば、必ずなれます。」
と答えていた。
もちろん否定はしない。しかし夢の無い私としては、
「いくら夢を追っても、宇宙飛行士になる資質がなければ無理ですね。仮に資質があっても最後は運ですよ。現に他にも数名の候補者がいたけど、最後に指名されたのは私です。他の候補は私と大して変わらない資質も持っていましたが、彼らが宇宙に行けるかどうか判りません。」
というような、子供の夢を完全に破壊する回答を期待したりするのだが、それは有り得ない。
人は歳を取るにつれて自分の限界を知り、自分の能力に見合った仕事や生活に折り合いをつけて生きていくのである。その女の子にしても、ほっておいても数年後には世の中の現実を知ることになるだろう。彼女が驚くべき強運の持ち主で、本当に飛行士になってしまったら?それはそれで、この世もまだ捨てたものではないと思えるかもしれない。

本当に夢の無い話をなってしまった今回のコラム。
しかし考えてみれば、今香港に住んでいる私は、10年ほど前、何時か海外に住んで見たいな、と漠然に夢見ていたのであった。この世もまだまだ捨てたものではない。(了)




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